海底からの新たな抑止力：日本の潜水艦、垂直発射装置搭載で進化を遂げる

近年、東アジアにおける安全保障環境は厳しさを増しており、日本も防衛力の抜本的な強化を進めている。その中で注目されているのが、潜水艦への垂直発射装置（VLS）搭載だ。防衛省は2025年度から潜水艦に搭載できる水中発射型VLSの研究に着手することを決定し、2029年度までの5年間で約300億円の研究費を投入する計画だ。 従来、海上自衛隊の潜水艦は魚雷のように水上・水中の艦艇を攻撃する兵器しか搭載していなかった。しかし、VLSを搭載することで、長距離ミサイルによる陸上施設への攻撃が可能となり、日本の抑止力は飛躍的に向上する。

VLS搭載の潜水艦：秘匿性と攻撃力を兼ね備えた新たな戦力

潜水艦は、海中深くを航行するため、衛星やレーダーによる探知が困難という特性を持つ。そのため、地上基地や滑走路が攻撃を受けても、潜水艦は生き残り、反撃能力を発揮できる可能性が高い。VLSを搭載した潜水艦は、まさに「海中からの反撃能力」の要となる存在と言えるだろう。

nippon.comの記事「令和の潜水艦 : 海中からの反撃能力保有へ―難敵は『人』」では、潜水艦への長距離巡航ミサイル搭載が日本の防衛力強化策の1つとして紹介されている。1000キロ超の射程を持つ国産巡航ミサイルや、米国製のトマホークミサイルの搭載が想定されており、複数のミサイル同時発射が可能となることで、潜水艦の攻撃力は格段に向上する。

技術的課題を克服し、新たな潜水艦時代へ

潜水艦へのVLS搭載は、技術的に容易なものではない。防衛省は、誘導弾の海中発射時の船体動揺制御、発射口ハッチ開口時の水圧への耐性確保、船体傾斜時の誘導弾垂直発射など、克服すべき課題は複数あると認識している。

しかし、防衛省は模型やシミュレーターを用いた研究を進める方針を示しており、高水圧に耐えうる船殻開発のための合金技術やガス制御技術などの研究にも注力する構えだ。

また、「海洋安全保障情報旬報 2019年3月1日－3月10日」の記事では、米海軍が空母兵力削減を検討している一方で、潜水艦の重要性が増していることが指摘されている。潜水艦は、空母に比べてコストが低く、隠密性が高いため、今後の海洋安全保障において重要な役割を担うと予想される。

各国の動向と日本の進むべき道

VLSを搭載した潜水艦は、米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮などが既に保有している。日本も潜水艦の近代化を進め、周辺国の脅威に対抗する必要がある。

「Malaysia's right to stake claim to Spratlys」の記事では、南シナ海における領有権問題が取り上げられている。中国は海洋進出を強めており、周辺国との緊張が高まっている。日本も、海洋権益を守るためには、潜水艦をはじめとする海上防衛力の強化が不可欠だ。

「Second track on Indo-Pacific and the Quad」の記事では、日米豪印4カ国枠組み（Quad）の重要性について議論されている。Quadは、インド太平洋地域の安全保障協力の枠組みであり、中国の海洋進出を牽制する役割が期待されている。日本は、Quadなどの多国間協力を通じて、地域の平和と安定に貢献していくべきだろう。

潜水艦の可能性：抑止力から多様な任務へ

潜水艦は、従来の対艦・対潜任務に加えて、情報収集、機雷敷設、特殊部隊の輸送など、多様な任務を遂行できるプラットフォームとしての可能性を秘めている。

「Pakistan’s Navy Spotted, Warned Indian Submarine in Arabian Sea」の記事では、パキスタン海軍がインド海軍の潜水艦を探知したと主張している。潜水艦は、その隠密性から偵察・監視活動にも有効であることがわかる。

「Netanyahu: Israeli Navy Could “Block” Iranian Oil Shipping”の記事では、イスラエル海軍がイランの石油輸送を阻止する可能性が示唆されている。潜水艦は、海上交通路の遮断にも利用できることを示す事例と言えるだろう。

結論：日本の安全保障における潜水艦の役割

潜水艦は、日本の安全保障にとって重要な役割を担っている。VLS搭載による攻撃力向上は、日本の抑止力を強化し、周辺国からの脅威に対抗する上で大きな意味を持つ。 今後、日本は技術的課題を克服し、潜水艦の能力を最大限に引き出すことで、新たな安全保障環境に対応していく必要がある。潜水艦は、日本の平和と繁栄を守る上で、欠かせない存在となるだろう。