電動アシスト自転車の違法改造：加速する危険と規制の課題

近年、電動アシスト自転車の普及が著しい一方で、その違法改造による事故や危険行為が社会問題となっています。特に、速度リミッターを解除する改造は、自転車本来の安全性を損ない、歩行者や他の車両に深刻な危害を及ぼす可能性があります。

先日、大阪府警は、電動アシスト自転車のリミッター解除部品を販売していた５人を全国で初めて商標法違反の疑いで書類送検しました。彼らは、大手メーカーのロゴを無断で使用し、改造部品をオークションサイトなどで販売していました。改造された自転車は、時速50キロ近くまで加速するケースもあったとみられ、事故のリスクが非常に高まります。

この事件は、電動アシスト自転車の違法改造問題の深刻さを改めて浮き彫りにしました。警察はサイバーパトロールなどを通じて違法な改造部品の販売を取り締まっていますが、インターネット上での取引は追跡が難しく、撲滅には至っていません。

法規制の現状と課題

日本では、電動アシスト自転車は道路交通法上「自転車」に分類され、歩道走行が認められています。しかし、リミッターを解除した改造車は原動機付自転車とみなされ、運転免許やヘルメット着用、ナンバープレートの取得などが義務付けられます。

しかし、現状では、改造された電動アシスト自転車と通常の電動アシスト自転車を外観で見分けることは困難です。そのため、警察による取り締まりは容易ではなく、違法改造が野放しになっているのが現状です。

事故の増加と危険性

電動アシスト自転車の事故は増加傾向にあり、過去5年間で5倍に増えています。特に、リミッター解除による高速走行は、重大な事故につながる危険性が高く、社会的な問題となっています。

違法改造された電動アシスト自転車は、歩行者にとって大きな脅威となります。歩道上で高速走行する自転車との衝突事故は、歩行者に重傷を負わせる可能性があります。また、自転車に乗っている本人にとっても、高速走行時のバランス制御は難しく、転倒による重傷のリスクが高まります。

モペットとの類似性

電動アシスト自転車のリミッター解除は、モペットと呼ばれるペダル付き原動機付自転車と類似しています。モペットは原動機で走行することができ、電動アシスト自転車よりもさらに高速走行が可能です。

モペットは原動機付自転車として扱われ、運転免許やナンバープレートの装着など、原付バイクと同様の規制が適用されます。しかし、電動アシスト自転車は自転車として扱われるため、これらの規制が適用されません。

この違いが、電動アシスト自転車の違法改造を助長している可能性があります。モペットと同様に、電動アシスト自転車にも原動機付自転車としての規制を適用することで、違法改造の抑止効果が期待できます。

対策と今後の展望

電動アシスト自転車の違法改造問題を解決するためには、法規制の強化、取り締まりの強化、そして利用者に対する啓発活動が重要です。

法規制の強化としては、リミッター解除を明確に違法行為として規定し、罰則を強化することが必要です。また、改造された電動アシスト自転車を容易に見分けられるように、外観上の規制を導入することも検討すべきです。

取り締まりの強化としては、警察によるサイバーパトロールや路上での取り締まりを強化する必要があります。また、自転車販売店などに対して、違法改造の防止に関する協力を求めることも重要です。

利用者に対する啓発活動としては、電動アシスト自転車の違法改造の危険性や違法性を広く周知する必要があります。特に、若年層に対しては、自転車の安全な利用方法に関する教育を強化する必要があります。

電動アシスト自転車は、環境に優しく便利な乗り物です。しかし、違法改造によってその安全性が損なわれることは、決して許されるべきではありません。関係機関が連携し、違法改造の撲滅に向けて積極的に取り組むことが求められています。